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一級建築士事務所 創環境Design
ホーム お財布とヒトにやさしい住まいのヒント 第11回

Vol.11 / 12

地域資産を活かす住まい

タイムス住宅新聞 連載「お財布とヒトにやさしい住まいのヒント」|一級建築士 村山 創

「地域資産」という新しい物差し

「理想の住まい」と聞いて、あなたはまず何を思い浮かべますか?広々としたリビング、最新のシステムキッチン、高い断熱性能、あるいは憧れの書斎……。これらはすべて「建物の内側」にある要素です。もちろん、これらも快適な暮らしには欠かせません。しかし、もしこれらをすべて叶えようとすれば、建築コストは跳ね上がり、土地の広さも必要になります。

いま、これからの時代の賢い住まいづくりとして注目したいのが、「住まいの価値は『家の外』にも広がっている」という視点です。これを「地域資産の活用」と呼びます。家の中にすべての機能を詰め込むのではなく、街そのものを自分の家の一部として捉え直す。そうすることで、コストを抑えながら、家の中だけでは完結できない豊かな暮らしを手に入れることができます。

地域資産とは「所有」せずに「共有」すること

「地域資産」とは、個人が所有するものではなく、地域全体で共有されている環境や機能のことを指します。具体的には、スーパーマーケット、公共交通機関、公園、図書館、スポーツ施設、そして海や山といった自然環境などです。これらは「ただそこにある施設」ではなく、見方を変えれば「あなたの家の機能を拡張してくれる外部装置」なのです。「所有」から「利用・共有」へ。この視点を持つだけで、必要な家のサイズや設備がガラリと変わります。

地域資産の活用イメージ

①「あなたの保管庫」としてのスーパーマーケット
近所のスーパーマーケットを「地域資産」として捉え直してみましょう。昨今、共働き世帯の増加に伴い、ネット注文の活用や、定期配送サービスなどが進化しています。徒歩圏内に充実したスーパーがあれば、自宅に大きな冷凍庫や、数週間分の食料をストックする巨大なパントリーを作る必要性は薄れます。「必要な時に、必要な分だけ、新鮮な状態で手に入る」環境がそばにあること。それはつまり、スーパーが「いつでもアクセス可能な、我が家の外部冷蔵庫」として機能していると言えるのです。この活用によって、キッチンの収納スペースをコンパクトにでき、その分の予算や面積をリビングの広さや別のこだわりに回すことができるようになります。

②「あなたの移動手段」としての交通インフラ
移動手段についても同様です。「駅チカ」や「バス停のそば」という立地、そしてカーシェアやシェアサイクルのステーションが近くにあることは、非常に強力な地域資産です。車は確かに便利ですが、車両代、保険、税金、ガソリン代、車検代、そして駐車場代を含めると、実は生涯で数千万円単位の固定費になります。もし、地域の交通インフラを「共有の足」としてフル活用できるなら、車を手放す、あるいは2台持ちを1台に減らすという選択肢が生まれます。「所有」にこだわらないことで、家計に大きな余裕が生まれます。

③「あなたの余暇施設」としての公共施設と自然
健康やリフレッシュの面でも、地域資産は大きな力を発揮します。高価なトレーニングジムに通わなくても、地域の体育館や公共トレーニング施設を活用すれば、数百円で本格的な設備を利用することができます。公園にも気軽に利用できる運動器具があり、健康を維持するために積極的に利用したい場所です。特に、沖縄のような自然環境に恵まれた地域では、この価値がさらに高まります。歩いて行ける距離に海がある。夕日がきれいに見える海岸がある。これらは、どれだけお金をかけて内装を豪華にしても、家の中だけでは絶対に再現できない価値です。仕事終わりに海辺を散歩してリセットする。休日に公園の芝生で本を読む。自宅の庭以上に広大で気持ちの良い「外部リビング」になり得ます。

④「あなたのサードプレイス」としてのコミュニティ
そして忘れてはならない最大の地域資産が「人」です。交わされる挨拶、顔なじみのお店の人、地域の行事を通じて生まれる緩やかなつながり。これらは数値化できませんが、災害時の助け合いや子育てのサポート、そして日々の防犯面において、何よりも頼りになる存在です。さらに、地域コミュニティは自宅(ファーストプレイス)や職場(セカンドプレイス)とは異なる、心地よい第三の居場所=「サードプレイス」になり得ます。「顔の見える街」に暮らす安心感と、人とのふれあいから生まれる幸福感。これは、どんなにお金をかけても建物単体では作り出せない、貴重な資産です。地域は単なる「住む場所」ではなく「関わる場所」です。ぜひ地域の輪の中に一歩踏み出して、参加してみてください。

街全体を住まいに拡張する

住まいを考えるとき、私たちはどうしても建物の「内側」ばかりを見て悩みます。しかし、建物単体の性能を追い求めるだけでなく、地域全体を「一つの大きな住環境」として捉える。そうすることで、限られた予算の中でも、想像以上に豊かで便利な暮らしを実現できるはずです。地域とつながり、街の資産を使いこなすことで、あなたの暮らしは家の外側へと無限に広がっていきます。これから住まいを考える方は、ぜひ「この街の資産は何だろう?」という視点で、土地やエリアを見つめ直してみてください。きっと、家の中だけでは見つからなかった、新しい豊かさのヒントが見つかるはずです。

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