Vol.12 / 12・最終回
ウェルビーイングと住環境 ― 人生を楽しむ住宅のかたち
タイムス住宅新聞 連載「お財布とヒトにやさしい住まいのヒント」|一級建築士 村山 創
「ウェルビーイング」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。ウェルビーイング(well-being)とは、単なる一時的な満足や楽しさではなく、持続的に幸福が続いている状態を指します。ここで大切なのは「持続的」であること、そして「今この瞬間」も含まれていることです。将来の幸福だけでなく、今の心地よさも大切にする考え方です。
ウェルビーイングを実現するためには、いくつかの“資産”が重要だといわれています。代表的なものが、金融資産・人的資産・健康資産・社会資産です。金融資産は、家計の安定や将来への備え。人的資産は、知識や経験、働く力。健康資産は、心身の健やかさ。社会資産は、人とのつながりや信頼関係です。
これまでの連載では、住まいがこれらの資産にどのような影響を与えるかをお伝えしてきました。省エネ性能の高い住宅は、金融資産に貢献します。快適でトキメキのある環境は、人的資産と健康資産を支えます。家族や地域とつながる空間は、社会資産を育てます。
住まいは単なる「器」ではありません。日々の暮らしの質を高め、人生を前向きに転換する力を持つ“あなたの土台”です。そのためにも、一度ご自身のウェルビーイングのポートフォリオを確認してみてください。資産というとお金だけを思い浮かべがちですが、人生を豊かにする資産は多面的です。そしてポートフォリオは、バランスが何より重要です。判断基準は人それぞれ。正解は一つではありません。
今のあなたには何が足りていて、何が不足していますか。忙しい日常の中で立ち止まり、自覚することが第一歩です。そして足りない要素を意識的に補強していくことで、幸福度は着実に高まっていきます。
住まいを工夫することは、人生の幸福度を高めることにつながります。学びの時間を確保できる空間、家族と語り合える場所、心身を整える環境――それらはすべて、未来への投資です。全12回にわたり、「人生を楽しむ住宅」という視点から住まいを考えてきました。家は完成した瞬間がゴールではなく、暮らし続ける中で価値を育てていく存在です。
ぜひ、あなた自身の価値観に正直に。そして、あなたらしいウェルビーイングを実現する住まいを見つけてください。これまで連載をお読みいただき、本当にありがとうございました。