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社会資本を高める住まい ―つながりは人生の幸福度を上げる―
タイムス住宅新聞 連載「お財布とヒトにやさしい住まいのヒント」|一級建築士 村山 創
人生が豊かになる人とのつながり
12月になると、クリスマスや忘年会など、人との交流が一気に増える季節ですね。普段は仕事や家事に追われて慌ただしく過ごしていたとしても、この時期になると自然と人と会う機会が増え、いつも以上に笑い合ったり、心が温かくなる瞬間が多くなります。
こうした「つながり」は、実は私たちの人生において、とても大きな意味を持っています。心理学や社会学の研究でも、人とのつながりは幸福度に大きく影響を与えることが分かっており、家族・友人・地域・職場・オンラインのコミュニティなどのネットワークを指す「社会資本(ソーシャルキャピタル)」は、豊かな人生をつくる重要な要素とされています。
みなさんにとって、今年一番の「楽しかった思い出」は何でしょうか?おそらく、その多くが家族、友人、子どもの行事、地域のイベント、オンライン仲間との交流など、“誰かと過ごした時間”に関連しているのではないでしょうか。こう考えると、「人とのつながり」を育む住まいは、人生の幸福を高めるための大切な土台になると感じています。
住まいが「社会資本」を育む場所になる
私は、住宅の設計や相談に携わる中で、住まいは単なる「箱」ではなく、人と人を結びつける「場所」になると強く感じています。人が集まりたくなる空間、誰かを招きたくなる雰囲気のある家は、そこに住む人の交流を豊かにし、結果的に人生の満足度を引き上げてくれます。
たとえば、少しの工夫で交流の機会は驚くほど増えます。リラックスできるウッドデッキやテラス、庭やベランダで会話が楽しめるBBQスペース、家族や友人と料理を楽しめる対面型・回遊型のキッチン、風景が楽しめる居心地のよいリビング、人を呼びやすい広がりのある空間——こうした少しの工夫があるだけで、人が集まり、笑顔が生まれる回数は驚くほど増えていきます。家という場所は「自分のため」だけでなく、「大切な人とのため」にもつくられるべきです。そう考えると、住まいは社会資本を高めるための、非常に効果的な演出の場になります。
行事や記念日を活用して、交流の機会をデザインする
誕生日、季節の行事、忘年会・新年会、子どものイベントなどは、交流を生む絶好のチャンスです。特別な準備をしなくても、「せっかくなら家で集まろうか?」と声をかけてみるだけで、心地よいコミュニケーションが生まれます。特におすすめなのは「食事」を中心にした交流。美味しいものを囲むと人は自然と笑顔になり、肩の力が抜け、会話も弾みます。大人数が集まる必要はありません。2人でも3人でもいい。小さな集まりが積み重なることで、気づけば「人が集まる場所」になり、そこに住む人の社会資本は自然と増えていきます。
思い出を「心の配当金」にする
交流の楽しさをさらに大きくしてくれるのが「写真」です。誕生日、季節のイベント、友人との語らい、家族との何気ない食卓。そうした日常の一瞬を写真に残しておくことで、後から見返したときに楽しかったトキメキを何度でも味わうことができます。これは「思い出の配当金」と呼ばれます。思い出の配当金が多いほど、人生は豊かに感じられていきます。家の中に飾られた写真や絵を目にするだけで、日常に優しい彩りが生まれます。
もちろん、お店で会食するのも素敵ですが、たまには思い切って家に人を招いてみるのはいかがでしょうか?難しい準備は必要ありません。玄関に季節のオーナメントを飾ったり、植物を加えたりするだけでも、訪れた人は「歓迎されている」と感じて嬉しくなるものです。おもてなしとは、豪華さではなく、相手を思う気持ちの表現。そうした心遣いをきっかけに、人との関係は自然と深まり、家自体が「幸せを呼び込む場所」へと育っていくと信じています。
住まいは幸せを育てる「舞台」
社会資本が豊かになるほど、人の幸福感は高まると言われています。その土台となるのが、日々を過ごす“住まい”です。家が変わると、暮らしが変わり、暮らしが変わると、交流が増え、交流が増えると、人生が豊かになります。ぜひみなさんの家が、誰かと笑い合える「心地よい舞台」になりますように。そして、その舞台を彩るたくさんの思い出が、これからの人生の大きな支えになりますように。