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人的資本を高める住まい:住まいを「チャレンジの場」へ
タイムス住宅新聞 連載「お財布とヒトにやさしい住まいのヒント」|一級建築士 村山 創
住まいは自分を育てる経験の場
私は、皆さんが暮らしている「住まい」を、人生をより豊かにするための「チャレンジの場」として考えてほしいと思います。衣・食・住という言葉があるように、住まいは生活の基盤であり、心と身体の健康を支える大切な環境です。その「住」という舞台を、単なる生活の器ではなく、自分を成長させる経験の場として捉えると、暮らしは一段と楽しく、充実したものになります。
たとえば、好みのインテリアに挑戦してみる。絵画や楽器、サーフボードなど、自分らしさを表すアイテムを壁に飾ってみる。あるいはDIYで家具や棚を自作してみる。完成した時の達成感は格別ですし、失敗しても「次はこうしてみよう」と工夫するうちに、手を動かす楽しさや創造の喜びが生まれます。
他にも、ホームシアターを設けて家族と映画を楽しんだり、スマートスピーカーをつなげて暮らしを便利にしたり、ベランダにウッドデッキを敷いて家族や友人との語らいの場をつくるなど、住まいを少し工夫するだけで、日常はぐっと豊かになります。網戸の張替えや壁紙の塗り替えといった小さな補修やリフォームも、挑戦するほどに住まいへの愛着が深まっていきます。
「モノ」から「コト」へ、体験が価値になる
近年、「モノ消費」から「コト消費」へと価値観が移り、「経験」の価値が注目されるようになりました。住まいも同じで、完成された空間を買うよりも、自分で手を加え、試行錯誤しながら育てていく過程そのものが豊かさを生み出します。失敗も貴重な経験です。思い通りにならなかった補修や組み立てに苦労した家具も、振り返れば笑い話となり、思い出の一部として記憶に残ります。
こうした小さな行動の積み重ねが、主体性を高め、自信を育て、あなたの「人的資本」を高めていくことに繋がります。人的資本とは、お金やモノではなく、自分自身のスキルや知識・経験です。人生を支えるもっとも大切な資産です。住まいを通して得た経験は、暮らしのスキルとしてだけでなく、人生のあらゆる場面で活かされていきます。
環境が人をつくる
人は環境に大きく影響されます。快適で心地よい空間に身を置くと、前向きな気持ちになり、行動意欲も高まります。逆に、使いづらい、居心地が悪い空間では気力が低下していきます。だからこそ、自分の住まいを主体的に整えて、工夫を重ねることが大切です。住まいを自分らしくデザインすることは、すなわち自分の人生をデザインすることにもつながります。日々の暮らしのなかで、小さなチャレンジを積み重ねてみてください。毎日の家事や掃除などでも、構いません。あなたの頭から出てきた想像力は、あなたの人生をより豊かにしてくれます。
※参考:山口周 著「人生の経営戦略」