Vol.4
住まいは感情で選び、理性で守る
タイムス住宅新聞 連載「建築士が語る 人生を楽しむ住まい」|一級建築士 村山 創
住まい選びは、少し恋に似ていると思います。明るいリビング、料理が楽しくなりそうなキッチン。「こんな家で暮らしたい」と未来を思い描いて、胸がときめく。そんな一目ぼれのような出会いがあります。この「ときめき」は、とても大切。住まいへの満足感は、理屈だけでなく、この感情から生まれるからです。
でも、気持ちだけで決めてしまうと、あとから家計に無理が出ることがあります。住まいは、一生で一番大きな買い物。買うときどれだけ気分が高まっていても、ローンの支払いは、思っているよりも長く続きます。
しかも、お金がかかるのは家だけではありません。固定資産税、火災保険、修繕費、毎月の光熱費。さらに、車の買い替えや、子どもの教育費も必要になります。とくに金利が読みにくい今、気持ちと冷静さの両方が必要です。
そこで大切になるのが、感情を支えるための「数字」です。それは、毎月の返済額だけではありません。35年先までの、お金の出入りを書き出した『ライフプラン表』です。
これを作ると、いろいろなことが見えてきます。いくらまでなら無理なく返せるのか。出費が増える時期でも、家計に余裕は残るのか。家以外に、どのくらいお金を残しておけばいいのか。子どもの進学も、車の買い替えも、あらかじめ織り込んでおけます。すると、ぼんやりした不安が、「これなら大丈夫」という安心感に変わっていきます。ライフプラン表は、あなたの未来地図になります。
もうひとつ、できればやってほしいことがあります。それは、光熱費や修繕費まで含めた「一生分の住まいの費用」で比べることです。買うときの値段が少し高くても、性能がよくて光熱費を抑えられる家があります。反対に、安く買えても、性能が低く、毎月の電気代や将来の修理代がかさむ家もあります。値段だけを見ても、本当にお得かどうかは分かりません。住まいは、買った瞬間がゴールではないのです。
なんだか、結婚にも似ていますね。心がときめくことは、何より大切です。でも、長く幸せに暮らしていくには、お互いの価値観や、これからの暮らしの見通しも欠かせません。気持ちだけでは不安定になり、計算だけではさみしい。両方がそろってこそ、幸せな暮らしにつながります。
ワクワクする気持ちを大切にしながら、ライフプランという冷静さで家計を守る。心で恋をして、理性で守る。そのバランスが、長く続く幸せにつながっていくのだと思います。